根拠のない自信はない

根拠のない自信はあるのか?

「根拠のない自信を持とう!」

そう呼びかける人がいます。

見下されてきた人の中で、このような言葉に憧れ実践した人はいないでしょうか?

しかしなかなか上手くいかない。

根拠のない自信って言われても、結局見下される恐怖に負けてしまう…。

悔しいですよね。

しかし、ここでハッキリ言ってしまいましょう。

根拠のない自信など存在しないと。

これは、あなたには自信が持てないと言っているわけではありません。

この世界のほとんどの人は、根拠のない自信なんて持っていないのです。

自信を持つことを許されなかった人

人には、自信を持つことが許される人と、遠回しに許されてこなかった人がいます。

後者の中で特に多いのは、見下されサバイバーにあたる人です。

といっても、「自信なんて持つな!」とストレートに言われたとは限りません。

地味で、誰しもスルーするようなシーンで自信がゴリゴリ削られていきます。

例えば仕事中に、少しでも楽しんだり嬉しそうにしていると

「ねえ!ここできてないんだけど!」

と他の人ならスルーされるような、仕事の粗を掘り当てられ、その場の空気が凍るまで説教されたり

皆と一緒に笑っていると

「お前が笑っていると気持ちが悪いな」

と、自分に対してのみ人格否定をしてくる。

「楽しむことと自信とはあまり関係ないのでは?」と思われたかもしれませんが、

楽しんだり、喜んだり、他人の前で堂々と感情を表現することも、それだけの自信が必要です。

上の例で言えば、人前で「楽しむ」「喜ぶ」ために必要な自信を削られたわけです。

見下されサバイバーの方は特に幼少期、このような経験が多かったのではないでしょうか。

一方で、自由気ままに感情を振り撒き、それが許される人もいます。

「根拠のない自信」と呼ばれるものは、このような人達が持っていることが多いのです。

しかし、それは本当に「根拠のない」ものなのでしょうか?

「自信」は過去の記憶に依存する

物事に対して「できる」「できない」を判断する材料は、過去の自分の実績を見て判断することがほとんどではないでしょうか。

例えばしっかり勉強してきたテストでも、得意である数学と苦手な国語では、それに対する姿勢は違ってきますよね。

数学は過去に他教科に比べて勉強しなくても良い点を取れた経験があったからこそ、自信があり「得意」といえる。

つまり「根拠のない自信」がある人は、過去に「根拠のない自信」を持てるような経験をしてきたことでうまくいったのです。

要は「根拠のない自信」で成功した「根拠」があるというわけです。

それは生まれつき素質があったからかもしれません。

運が良く、最初の1回が上手くいったからかもしれません。

それを成し得るだけの環境に恵まれていたからかもしれません。

もちろん、それによって得たその人の「自信」も大変貴重なものです。

ただ、その自信を「根拠はない」と言ってしまうのは、過去を無視しているのにすぎないのです。

「根拠のない自信」は良いものか?

「根拠のない自信」というと聞こえは良いのですが、本当にそうなのかと疑ってみることも必要です。

例えば、あなたの恋人や大切な友人・家族が大きな怪我や病気をしたとします。

成功確率が半分を切った、難しい手術が必要になるほどの状況。

そんな状況で、手術を1度もしたことのない医者になったばかりの人が「私がやります!私には自信があります!根拠はないけど絶対できます!」と言いだしたら、「いやいや…」と止めたくなるのではないでしょうか。

極端だと思われたかもしれませんが、「根拠のない自信」を持つということはこういうことです。

似たような言葉で信じられるのは、過去にたくさんの手術を成功させてきた実績があるお医者さんではないでしょうか。

そしてそんな実績のある人は「根拠のない自信」などに頼らず、毎回慎重な態度で向き合っているのではないでしょうか。

上の例のような、命に関わるほど重大じゃなかったとしても、その「自信」を持つに値する根拠がない人は、周りから白い目で見られてしまいます。

このように「根拠のない自信」と呼ばれるものを持とうとすると、受け取る相手にとってはただの不安要素になってしまうのです。

周りはそんなに「自信」を持っているのか?

見下されサバイバーの方含め、自信が極端にない人は、どうしても「自信」に夢を見すぎてしまいます。

これを書いている私もそうでした。

自信があれば、堂々とできる。

自信があれば、人生が一気に変わる。

自信があれば、皆から好かれる。

しかし、世の中の人はそんなに「自信」に満ち溢れているのでしょうか?

確かに先程述べた通り、昔から自分らしく振る舞うことを許され、立派な自信の土台を持っている人もいます。

しかし、ほとんどの人は同時に自分自身の「弱さ」や「自信のなさ」を抱えて生きています。

そしてハードルの少し高い乗り越えるべきことに直面した時、

「私に出来るのかなぁ…」

「でもやるしかないよなぁ…」

と、不安になりながらもその人なりに葛藤し乗り越えていくのがほとんどではないでしょうか。

堂々と「出来る」という人もいますが、それは過去にそれだけ言える経験が本人の中にあるから言っているにすぎないのだと思います。

だからもし、あなたが「根拠のない自信」に憧れているのだとしたら。

執着する必要はもうありません。

根拠のない自信などないのですから。

生きていくのに必要な「最低限」の自信を身につけていくだけでいい。

それだけで、充分ではないでしょうか。

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