前回の記事でお話しした通り、聞き苦手さんの苦しみはなかなか理解されません。
何回聞いても聞き取れないという辛さ。
再度聞くたびに、イライラした表情へ変わっていく話し相手の表情。
それはまるで、ゲームの残機(ライフ)が減っていくような感覚。
そんな苦しみを周りに打ち明けてみるも…..。
笑われてしまう。
不思議な顔をされる。
しまいには、あなたの努力不足と思われてしまう。
話しても、結局何も変わらない。
そういった経験が多いのです。
なぜ聞き苦手さんはこんなにも理解されないのでしょうか?
なぜ理解されないのか?
聞き苦手さんが理解されない理由。
その1つは
全く聞こえないわけではないから
というものです。
そもそも、聞き苦手というのがあくまで「苦手」だからです。
単に苦手なだけで、全く聞こえないわけではない。
国語がいくら苦手でも、テストで0点を取るとは限らないでしょう。
テストの中でも比較的得意な問題だってあるでしょう。
多少は分かる、でも解けない問題が多い。
聞き苦手もそうです。
聞こえなくはないけど、どうしても聞こえない。
それは、生まれつき聴力が弱いとかそういうモノとは限りません。
聞き苦手の原因の1つと言われるAPDは耳の問題ではなく、脳の問題と言われています。
そのため、相手のセリフが全部聞き取れる場合もあれば、一部しか聞き取れない場合もあるのです。
特に周りに「聞こえない」と説明しても、いざという時に限って普通に聞こえたりします。
そんな一例だけ取り上げられて
「なんだ、聞こえてるじゃん」
と言われてしまう。
だからといって、聞こえなかったり聞こえたりすると説明しても難しそうな顔をされるか、ただただ苦笑いされてしまう。
このような望んでもない中途半端な状態が理解されない原因の1つなのです。
APDの知名度は低い
2つ目は、先ほど挙げたAPDがそんなに広まっていないからというものです。
発達障害と言われるADHDとASDの名前は世間に浸透しつつあります。
しかし、一方でAPDはあまり広まっていません。
医師の中でも知らない人がいるというほどですから、世間の知名度が低いのも無理はないでしょう。
そのため、世間では「聴こえない」というと単に聴力の問題をイメージしてしまうのではないでしょうか。
聴力の問題であれば、聴こえてさえいれば意味が通じると思われているのかもしれません。
また、その知名度の低さから、自分自身も知らない場合もあります。
もしかしたら、あなたも今初めて知ったかもしれません。
そのため聞くのが苦手ということは自覚していても、その原因までは辿れない。
まさか脳に問題があるとは思わない。
そうなると自分の聴力に問題があるか単なる努力不足ではないかと考えざるを得ないのです。
世の中は思ったよりも複雑
聞き苦手さんは、このような理由でなかなかその苦しみを理解されません。
それどころか、あなたの責任と言われてしまうことがあります。
重要なのは、そんな周りの声を鵜呑みにして責めすぎないこと。
自分自身が抱えているものの重さ、複雑さを自覚することです。
聞き取れる時もあれば聞き取れない時もあるじみぃ〜な生きづらさ。
APDといった、知名度の低い障害。
世間の多くの人は、そんな複雑さを知らなくても生きていけるでしょう。
でも、世界は「聞き苦手」1つとっても世間が想像するよりこんなに複雑なのです。
そんな複雑さを何よりも体感しているあなたが、それを否定してしまったら誰があなたを理解できるのでしょうか?
まずは、あなたがその複雑な生きづらさに寄り添うことから始めてみましょう。
あなたの聞き苦手は、あなたが1番よく知っているのですから。